これは、コンサルタント業をしているCさんから伺った話です。
Cさんは、以前、ある住宅会社D社のコンサルタントをしていました。
相談に乗ったり、指導をしたりする相手は、D社の2代目である専務でした。
D社では、以前2ヶ月に一度、下請け業者と共にゴルフコンペをしていました。
Cさんも、D社のコンサルタントをしている間は、そのゴルフコンペに毎回参加していたそうです。
ある年の正月明け5日のゴルフコンペの朝、Cさんがゴルフ場に行くと、D社の専務が「お年玉だ!お年玉だ!」と言って、大はしゃぎしていたそうです。
何事かと思って専務に尋ねると、年明け早々に公共工事の入札があり、D社が落札したとのことでした。
どうも、急遽決まった棚ぼた的な案件で、そのはしゃぎ様は、尋常ではなかったそうです。
専務のはしゃぎ様を見た顔見知りの下請け業者達は皆、Cさんを見て、苦笑するやら、しかめ面をするやら、複雑な表情だったそうです。
Cさんによると、専務との雑談の中で、よく公共工事の入札に関わる〇〇の話があったとのことです。
それによると、D社を含む数社で事前に相談が行われ、各社は2年に一度、確実に受注の順番が回ってくるとのことでした。
調度その頃Cさんは、コンサルタントとして、顧客対応体制の整備と充実を専務に提言していたそうです。
というのも、Cさんは、住宅会社として長期的に観た時、顧客対応に優れた会社が成長すると考えていたからでした。
しかし、D社の場合、住宅専業ではなく、労せず受注できる公共工事の甘い汁があるがために、逆に、顧客対応には十分な取組みができていなかった。
Cさんは、自分の提言を本気でやる意志があるかどうかを確かめたくて、専務に、「中途半端な取組みならどうせ成果は上がらないから、公共工事を捨てたらどうですか?」と質問しました。
専務は「2年に一度、労せずして美味しい果実にありつける。これは辞められない。」そう答えたそうです。
Cさんは、「もう自分の出る幕はない」と考え、その後間もなく、D社のコンサルタントを辞めました。
Cさんは、こう言っています。
収益の100%を住宅に頼っていて業績を伸ばしている住宅専業会社は、当然、顧客政策を最重要視していて、決して一顧客を軽視することはない。
そして、それがまた、住宅の品質やアフターサービスに、確実に生かされる。
消費者にとって、注文住宅を発注する時、住宅専業の会社か、兼業かという点は、重要な判断基準ではないでしょうか。
後日談ですが、以前D社と取引があった会社の社員である知人から聞いた話です。
知人が懇意にしている方が店舗を新築したいというので、D社の専務に、新築工事を紹介してあげたそうです。
もちろん、工事金額も住宅の金額とは比較にならない高額です。
紹介をもらった時、専務は、「受注できたら紹介のお礼をする。(紹介料を払う。)」と具体的な金額にも触れて言いました。
店舗のオーナーは、知人を非常に信頼しており、知人もD社を推薦し、間もなくオーナーは、D社に新築工事を発注しました。
しかし、専務の言葉は守られることなく、その後お礼についての話は、一切何もなかったということです。
第2話では、その典型をひとつお話します。
これまたお恥ずかしい話ですが、ウソをついた方は私のかつての友人で、ウソをつかれた方は私です。
私が以前学習塾を経営していたことはお話しました。
創業から10年余りして、私は、零細企業としては、大規模投資をしました。
もちろん大金は持っていませんでしたので、金融機関に融資してもらわねばなりません。
その頃、塾生の保護者でもある友人の一人が、ある金融機関の金融課長をしていました。
彼に相談すると、喜んで協力するという返事でした。
私も一安心し、後の手続きのほとんどを彼に頼りました。
決済が近付いたある時、彼が「この融資にある条件がついた。」といいました。
担保・保証人・決算結果・事業計画など規定の審査は全てパスしています。
それ以上に何だろうと思って尋ねると、「生命保険加入」だと言われました。
ここまで来て中止するわけにはいきません。仕方なく、彼が作成した生命保険プランを了承し、月3万円近い予定外のコスト負担を余儀なくされました。
さて、皆さんの中には、経営者の方もいるのではないかと思います。
独占禁止法の中に「優越的地位の濫用の規制」があるのをご存知でしょうか?
「優越的濫用」
規制対象には数種類の代表的な形態がありますが、そのひとつは「購入強制」です。
具体的に言うと、金融機関が融資を条件に他の金融商品の購入や加入を迫ることは、違反となります。
私の場合は、「迫られた」とは言えませんが「融資条件だ」とウソをつかれたことになります。
その時、私に「優越的地位の濫用の規制」についての知識があれば、すぐにウソだと見破ることができた筈ですが、分かったのは、ずーっと後になってからでした。
皆さんも十分ご注意ください。
彼のウソが、上司の命令だったのか、自分の営業成績を上げるために自分で考えた作戦だったのかは分かりません。
因みに、塾生だった彼の子供は、その後目出度く有名国立大学に合格し、彼は「お前のお陰だ。感謝する。」と言って、合格発表の日の夜は、私を食事に誘いました。
余程嬉しかったのか、彼は、調度その頃私が別な友人の保証人として代位弁済した150万円の半分を自分が負担すると、自分から申し出ました。
ただ、その後彼の口からは、一切その件についての話はありませんでした。
ウソというビジネススキルの話でした。
]]>