ウソは、利益をもたらす、実に手軽な、低コストの、資格や専門的な知識を必要としない便利なビジネススキルです。
日々、詐欺のニュースが報道されることからも、疑う余地のない現実です。
ウソのブレーキにはふたつしかありません。
ばれるリスクと良心(罪悪感)です。
もし、良心(罪悪感)がない、もしくは、希薄な場合、ブレーキは、ばれるリスクだけになりますが、実際のところ、ばれるリスクは、そう高くありません。
なぜなら、ウソに騙される人は、相手に対して無警戒な場合が多く、かつ、ほとんどの場合専門知識がないからです。
なので、ウソは、利益追求のために、利己主義者達に、日常的に用いられます。
第2話では、その典型をひとつお話します。
これまたお恥ずかしい話ですが、ウソをついた方は私のかつての友人で、ウソをつかれた方は私です。
私が以前学習塾を経営していたことはお話しました。
創業から10年余りして、私は、零細企業としては、大規模投資をしました。
もちろん大金は持っていませんでしたので、金融機関に融資してもらわねばなりません。
その頃、塾生の保護者でもある友人の一人が、ある金融機関の金融課長をしていました。
彼に相談すると、喜んで協力するという返事でした。
私も一安心し、後の手続きのほとんどを彼に頼りました。
決済が近付いたある時、彼が「この融資にある条件がついた。」といいました。
担保・保証人・決算結果・事業計画など規定の審査は全てパスしています。
それ以上に何だろうと思って尋ねると、「生命保険加入」だと言われました。
ここまで来て中止するわけにはいきません。仕方なく、彼が作成した生命保険プランを了承し、月3万円近い予定外のコスト負担を余儀なくされました。
さて、皆さんの中には、経営者の方もいるのではないかと思います。
独占禁止法の中に「優越的地位の濫用の規制」があるのをご存知でしょうか?
「優越的濫用」
規制対象には数種類の代表的な形態がありますが、そのひとつは「購入強制」です。
具体的に言うと、金融機関が融資を条件に他の金融商品の購入や加入を迫ることは、違反となります。
私の場合は、「迫られた」とは言えませんが「融資条件だ」とウソをつかれたことになります。
その時、私に「優越的地位の濫用の規制」についての知識があれば、すぐにウソだと見破ることができた筈ですが、分かったのは、ずーっと後になってからでした。
皆さんも十分ご注意ください。
彼のウソが、上司の命令だったのか、自分の営業成績を上げるために自分で考えた作戦だったのかは分かりません。
因みに、塾生だった彼の子供は、その後目出度く有名国立大学に合格し、彼は「お前のお陰だ。感謝する。」と言って、合格発表の日の夜は、私を食事に誘いました。
余程嬉しかったのか、彼は、調度その頃私が別な友人の保証人として代位弁済した150万円の半分を自分が負担すると、自分から申し出ました。
ただ、その後彼の口からは、一切その件についての話はありませんでした。
ウソというビジネススキルの話でした。